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暮らしと人生に余白を

「デジタル・ミニマリスト」【片づけ目線のブックレビュー】

約7分

今回はカル・ニューポート著「デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する」(Digital Minimalism:Choosing a Focused Life in a Noisy World」の感想です。

実は同時に飯島彩香さん著「ミニマリスト スマホの中を片付ける 」も読んでいました。この2冊は全く別の角度からスマホを中心に回る現代の生き方について書かれており、後者はデジタルサービスを選びこなし、使いこなす実用書の要素が強く、大変見やすくまとまった内容で、「なるほど!」「知らなかった!」「すごい!」「すぐまねる!!!」と友達に紹介したくなる本です。さらっと読めるけれどまねしどころが多くて進まない系の大好きな本です。

対してこの「デジタル・ミニマリスト」はどちらかと言うと精神的な向きあい方から問いかけられる内容で、デジタルデトックス期間については30日間あります(「スマホの中を片付ける」はデジデトの本ではありませんでした)。すぐにできる内容ではないものの、ソローの「森の生活」やアーミッシュのテクノロジーの取り入れ方など哲学的なテーマが多く興味深い内容でした。

ソローの「ウォールデン 森の生活」に、有名な一文があるー「多くの人は静かな絶望のなか日々すごしている(中略)彼らは、それより他の選択はないと決めてかかっている。しかhし注意深く賢明な人は、朝日がまっさらな一日を照らしたことを忘れない。思い込みを捨て去るのに遅すぎるということはないのだ。」

常時接続された世界を支えているテクノロジーと私たちの関係を現状のまま維持していくのは無理がある。そのうえ今の関係はソローが100年以上も前に述べた静かな絶望へと私たちを導こうとしている。だが、ソローが指摘するように、朝日は「まっさらな一日を照らした」のだ。現状を変える力が私たちにはまだ残されている。

Digital Minimalism:Choosing a Focused Life in a Noisy World

スマートフォンはスロットマシン

スマホ依存についてを述べるこの章では恐ろしいことが書いてあります。

「シリコンバレーはアプリをプログラミングしているのでしょうか。それとも人をプログラミングしているのでしょうか?」この質問に対しCBSテレビの特集「ブレインハッキング」でエンジニアのトリスタン・ハリスはこう答えます。「人を、です」と。

かつて「タバコメーカーのフィリップモリスが狙ったのはあなたの肺でした」「しかしAppストアは、あなたの魂を乗っ取ろうとしているのです」

依存を引き起こし、承認欲求を満たす。この本能的衝動は新しいテクノロジーにより乗っ取らてしまったようです。

今、私たちができることは自分の意志で「魂を乗っ取られないようにすること。そこで本書はデジタル・ミニマリズムを提案しています。

デジタル・ミニマリズムとは

自分が重きを置いている事柄にプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのルーツの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、他のものは惜しまず手放すようなテクノロジー利用の哲学

Digital Minimalism:Choosing a Focused Life in a Noisy World

これは新しいテクノロジーが目に留まったらほんのわずかでもメリットがありそうならとりあえず使ってみようという姿勢とは対照にある姿勢のこと。便利そう、おもしろそう、逃したら損しそう、、、キャッチ―なコピーにも振り回されずに自分の哲学に従って厳選すること、つまり主導権を自分が持っている状態のことをさします。

<デジタル・ミニマリズムの三原則>

  • あればあるほどコストがかかる
  • 最適化が成功のカギ
  • 自覚的であることが充実感につながる

アーミッシュのハッカー

第3原則についてはアーミッシュの現代の暮らしを例に出しているがこれがまた興味深いものでした。アーミッシュは新しいテクノロジーの一切を拒絶しているわけではないそうで、次のことを念頭に柔軟にテクノロジーを取り入れているのだそうで、それはそのまま私たちが参考にすべき指標でした。

自分たちにとって大事なことがらから逆算し、検討対象の新しいテクノロジーがその大事なことがらに対して益よりも害を及ぼすかどうかを考えるのだ。(中略)彼らは次のような問いかけを自分に向ける。

「これは役に立つだろうか、それとも有害だろうか。共同体としての私たちの生活一般を向上させるだろうか、それとも逆に破壊するだろうか?


Digital Minimalism:Choosing a Focused Life in a Noisy World

この問いは、デジタルテクノロジーのみならず、すべてのサービス、買い物、オファーに対しても取り入れたい問いかけであるでしょう。特にモノが多くなりがちで片づけが苦手な方の場合はぜひぜひ買う前、もらう前に一度考えていただきたいフレーズであると思います。

本書はこのあと実践的なデジタル片づけの方法についての章に入って行きます。そして作った時間の充実を提唱していたのが印象的でした。今やどうやって空いた時間を充実させればいいのかもわからない人が多いということです。

手元にスマフォがない時間をどう過ごし、満足するものにしていけばいいのか。じつはこの本の三分の一はそのレクチャーに充てられます。

質の高い余暇活動を

デジタルに埋めてもらうのではなく、自発的に歓びに満ちた質の高い余暇活動を送ること、そのためにデジタルテクノロジーを使うということの始まりに話は進んで行きます。

私たちはより幸福感を得るためにテクノロジーを使い始めたはずなのにいつの間にかテクノロジーが求める行動をとるようになっています。Googleのアルゴリズムのために本当に撮りたい動画を撮ることをやめたYoutuber、アルゴリズムに合わせてリールを多用するインスタグラマー、すでに私たちは自分の歓びよりもテクノロジーの望みを叶える行動に終始しています。

全ては何のために?誰のために?それを常に問いながら、テクノロジーのあらゆる誘惑を上手にかわしていかなくてはいけないようです。

自分の歓びや幸せを知っているのは誰?

何がココロの底から自分を喜ばせるのかを知るのはテクノロジーでしょうか?デジタルテクノロジーは今のところ脳を直接興奮させることはできても、各自の幸福までを先回りして提案してはいません。(時間の問題かもしれませんが)

テクノロジーなしで生きることはもうできないことは明白ですが、私たちはテクノロジーがここまで進んでなかった時代も知っている最後の世代になりそうです。ちなみに私が会社に入ったころはPCは部署に何台、とかいうどうやって仕事していたのか今では想像できない時代でした。

今ではふたつのスマホとひとつのPCでエンタメしたり仕事したり、喜怒哀楽のほとんどをこの中から得ています。たまに外を歩く時もYouTubeを聞きながら、おどろきや興味は目の前の木々よりも耳からということが増えています。

片づけコンサルタントなので物理的な「モノ」に対してはガードが堅いのですが、質量を持たない「情報」についてはゆるかったなと思います。

でも、モノでも情報でも基本は同じで「自分が人生で何を大事としているか?」に終始することがわかりました。

デジタル片づけも請け負っていますが、やはりまずは物理的な片づけを完璧に終わらせる順序がより強固で間違いなく人生を豊かなものにしてくれます。

あなたの人生に必要なモノをハッキリさせること、それがデジタル・ミニマリズムの根幹であり、時代を問わず人間の幸福の方程式になるのだと思いました。

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