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「サバイバルファミリー」 【エシカル目線のシネマレビュー】

約5分

2017年公開の「サバイバルファミリー」は矢口史靖監督の”サバイバルコメディ”というなぞのカテゴリーの邦画になります。

災害の多い日本で暮らすなら日ごろから防災意識は高めておきたい、、、3.11も近づいてきた昼下がりには一応コメディなので重すぎない程度に非常事態への心構えができて大変よい映画でした。

この先ネタバレ満載ですので、鑑賞してからお読みください(NETFLIXでやってます)

「サバイバルファミリー」レビュー

映画はある日突然、原因不明の事象により世界中で電気・水道・ガス・乾電池まで使えなくなり、なんとそれが2年以上続く話です。都会暮らしの主人公一家がチャリや歩きで鹿児島の実家を目指すハメになりその旅のなかで改めて家族のキズナや人間の生きるチカラや文明とは文化とは、、、を問われ、それぞれがたくましく成長していくロードムービーでもあります。

『人の生きる意味』的なところへ回帰したところで世界はもとに戻るのですが、新しい世界へ進んでいくことがいいのか、電気がない期間の世界へ退行したほうが人類にも地球にもいいのか、、、何気に大きな課題を残されたような気がしました。

主人公家族は電気がなくなって初めてお互いの目をみて話をします。それまでは家族それぞれがケータイ、PC、TV、、に目を落としながらのただの「情報伝達」としての会話しかしていなかったのです。それが、生きるため、鹿児島にたどり着くために話し合い、いがみ合いつつも協力し、初めて家族は家族という最小単位になり得たようでした。

そうして、いろんな人との交流を経て、奇跡的に鹿児島へたどり着きます。そもそも停電初日から情報がないので、大阪以西は電気が通ってるというウワサをもとに妻の実家を目指してきました。その障害が世界規模で起こっていたことは2年以上まるで縄文時代のように村で生きてからと知ることになります。

でも、村での暮らしはとっても充実していたようで、みんなイキイキしてるんです。会社人間だった父、魚をさばけなかった母、ネットばかりの大学生の息子、ケータイ命の高校生の娘、それぞれに村での大事な仕事ができて、肉体労働なのに、肌はつやつや、瞳もキラキラしてて、「悪いくない」感を感じるものでした。

鑑賞後の感想 

電気を使うとは「孤独を受け入れること」 便利と孤独の関係

鑑賞後の感想は「電気は私たちにたくさんの歓びを与えてくれたけど、同時に電気が私たちに『孤独』を与えてしまったんだなー」というものでした。

電気がなければ夜な夜なケータイをいじって他人をうらやむこともなく、誰にも頼らずに暮らすこともできず、どこか遠くへも行けず、『今、ココ』でできることに専念するしか選択肢がないでしょうから小手先の仕事が膨大で『孤独』を感じるヒマもなく、また遠くの人と生活レベルを比べる術もありませんから『劣等感』を感じることも、比べることで生まれる『孤独』を感じる機会もないでしょう。

電力のおかげで人類には時間ができて、体力も温存できて、手の中で地球の裏の世界のことまで知ることができるようになったけど、それまでの世界に存在しない量の『孤独』も産み出してしまったんですね。『孤独』が原因でココロや体の病気になる人は多い。若者たちはケータイやSNSが原因で死に追いやられる前に、よく考えたらケータイ捨てればよかったんだろうけど、そういう発想には至りませんよね。

でも最初から「電気を使うと孤独もついてくる」という使用上の注意を理解していたら、孤独を感じた時に「ムダな電力使いすぎかも、、」なんていう生産的な発想に切り替えられるかもしれない。

映画の中では早いうちから通信機能は不通になりますので、人に尋ねるしかなくなります。その不便さで逆に世界は広がっていくんですから、なんともこの世の矛盾たるや、、、。

風の時代はコミュニティを生きる

風の時代に入った今になって2017年の作品を突然鑑賞したのにもなにか意味があった気がしてなりません。

映画の主人公家族がたどり着いた村の生活はまさに古くて新しいコミュニティー。きっと私たちもこれまで電気のおかげで得た英知を新しいコミュニティの中で新しい方法で再現していくのだと思います。環境を壊さず、電気を使っていた時の幸せと同質のもの手に入れられる新しい技術を見つけていけるんだと思います。

人間の文化を少し退化させて、進化の速度を緩めて、地球が耐えられる年月を先へ先へ延ばす生活をすること、SDGsを参考にエシカル消費、エシカルライフをスタンダードにすることで、電気がもたらすモノの恩恵リストから『孤独』をはずすことができるようになれる。その時こそ、物質も精神もちょ~うどバランスの取れた「人類の英知ちょうどいい状態♪」になれるのでしょう。

やっと情報断食できるかも♪

電気を使うことは『孤独』を受け入れること。それがわかると、24時間中起きてる間はずっとYoutubeかNETFLIXかSpotifyの何かしらを流している私でもやっと情報断食できそう気がします(面白かったからもう一回観るのですが、、、)

監督の矢口史靖氏は(『ウォーターボーイズ』(01)、『スウィングガールズ』(04)、『ハッピーフライト』(08)、『ロボジー』(12)、『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』(14)を手掛けた方。『WOOD JOB』も癒しのために定期的に観てる映画なので、ステキな作品をどうもありがとうございますと伝えたいです。

そして、、『サバイバルファミリー』はテーマがこのコロナ禍で変わってしまった世界の前後にも通じるものがあったので、次回作も予言的教訓を与えてくれる作品かもしれませんね。

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